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    2007

10.10

( ^ω^)達はゲームクリアを目指すようです ( ^ω^)SIDE・2


攻略サイト
http://ambrosius.web.fc2.com/

2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 21:50:00.16 ID: BDy1x7dk0
 あるエロゲを真似て作った、白黒一対の短剣がオレンジの炎片を撒き散らして勢いよく振られた。
 順手で柄を握り、手首の返しを利用して、右へ左へ縦横無尽に振り回す。
 振りかぶる都度弾ける火花が、自分が着る学ランの袖に当たって跳ね返った。
 一振り3キロの鋼の塊は、ただでさえ代償に奪われる体力をさらに削り取っていく。
 それでも相手の特殊警棒を短剣がへし折り、振り上げた両刃が力の緩んだ手から折れた警棒を弾き飛ばした。

「うおらぁっ!」

( ^ω^)「おっ?」

 武器を失った相手は、愚かにも素手での特攻を試みた。
――ブーンは格闘技術を"極める"
 反射的に発動した魔法により、思考が急速にクリアになる。
 途端に脳内にある過去の経験から格闘技術に関するプログラムを参照、抽出、最適化し、独自の格闘技を編み出す。
 魔法の発動と同時、まるで脊髄反射のように自然と体が突き動かされた。
 一瞬のうちに両の短剣の柄を返し、その先端で相手の拳を砕く。
 怯んだ隙を見て、開いた上半身に身を寄せて反対の先端が鳩尾を抉った。

 勝負は一方的に終わった。

( ^ω^)SIDE・2



3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 21:53:32.02 ID: BDy1x7dk0
 銃刀法で捕まりたくはないので、短剣を作った魔法を解除し、光の粒子に変える。
 アスファルトを転がる男は、担ぎ上げて近くのベンチに寝かせておいた。
 野晒らしは可哀想だが、生憎、毛布の類は持ち合わせていないので仕方がない。
 "作り出す"魔法も、ゲームを開始しなければ、発動すら出来なかった。

 通学中である事を思い出し、焦りと共にポケットからケータイを取り出す。 
 登校中に運悪くプレイヤーに見つかり、有無も言わさずゲーム開始を宣言されたのだ。
 液晶に表示されたデジタル時計を見て、登校時間に間に合わないことを知る。
 どうすることも出来ずに悪態をつき、仕方なく歩いて駅を目指した。

 僕のレベルはつい最近12を超えたばかりだ。
 能力に恵まれたお陰か、元より運動は得意な結果か、今のところ無敗を貫いている。
 手が届かないほど凄まじい相手は衆多だが、中高と帰宅部の初心者にしてはよく頑張っている方だろう。

 このまま快勝を続ければ、いずれゲームクリアも視野に入るはずだ。



4 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 21:55:43.92 ID: BDy1x7dk0
 幾人か親切なプレイヤーに教わったが、レベルを上限まで上げるとゲームクリアができると言う噂が絶えないらしい。
 単なる憶測や噂の域を出ない話だが、それはプレイヤーの中では皆が知るルールとして存在していた。
 ゲームクリアした人間はまだ居ないとも、Lv200を超えるとクリア特典が貰え続投可能とも噂されていた。

 だが、そんな眉唾モノとは別に、レベルを上げるメリットは存在した。
 自分レベルと同じ相手と戦うだけで、ボーナスとしてポイントと経験値が付与されるのだ。
 この経験値修正は、自分のレベルに応じて増加する。
 負けても経験値・ポイント減少が軽減され、自分のレベルが高ければ高いほど有利と言うことになる。
 この法則は、公式サイトでは触れられていないものだが、比較的常識に属する。
 元々は勘のいいプレイヤーが見つけたらしかった。



6 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 21:58:06.77 ID: BDy1x7dk0
 正直なところ、そんなことは結局どうだってよかった。
 レベルを上げることが、ゲームクリアの近道になるのなら、僕はただ努力してレベル上げに専念するだけだ。
 元より、勝ち続ければレベルは自然と上がる。
 負けて痛い目に遭いと思うほど、僕はマゾっ気たっぷりではない。

 ケータイの画面で時間を確認し、数分待って電車に乗り込んだ。
 通勤ラッシュはとっくに過ぎ去り、随分と利用者の少なく、ちらほらと席が空いている。
 皮肉にも、普段は釣り皮に掴まる事すら危ういと言うのに、遅刻の焦りに包まれながら、座椅子に腰をかけた。



8 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:00:08.57 ID: BDy1x7dk0
 手持ち無沙汰を紛らわせるため、ケータイで公式サイトにアクセスして、自分の戦績を確認する。
 ポイントを消費し取り付けたニュース表示には、先の対戦結果やじきに開催されるだろうイベント告知、運営からの通知と言った文字が踊る。
 適当に流し読んでから、手元を操作して購入品一覧を開いた。
 手持ちのポイントと相談しながら、ポイント表を見比べてどのアイテムを揃えようか悩むのは、MMOなどでよくある楽しみの一つだ。

 購入したアイテムは数日後、申請した住所に届く。
 宛名は登録時の本名、差出人は"管理人"となって居るそうだ。
 ドクオと別れた直後、現住所の赤軌道ケニアとジョン・スミスを修正したのは言うまでもない。

 なんだか学校を目指すのが酷く面倒ごとのように感じてきた。
 電車が比較的大きな駅に滑り込む、この駅を出ればすぐに人の多い繁華街だ。
 金属のドアが開くのを眺めていて、気がつけば、僕は自然と電車のドアをくぐっていた。



10 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:01:04.50 ID: BDy1x7dk0
 面倒な学校生活は、もうどうだってよかった。
 どうせアンブロのポイントを使えば、生きていくだけの金は溜まる。
 今は到底足りずとも、レベルを上げて獲得分を増やせば、まったく夢のような話と言うわけではない。
 命がけの喧嘩は恐ろしいが、今はゲームが待ち遠しかった。 
 もうすぐ始まるイベントまでに少しは強くなりたいという気持ちもあった。

 僕は過去のイベントに参加していないが、経験値増加週間のようなMMO的なものや、宝探しなど競技大会のようなものまで幅広いと聞く。
 イベントは数日前に公式ページにて宣言されるのだが、日程を告知する事はない。
 どのような内容かも当日にならなければ解らない。
 その包装用紙に隠れるプレゼント然としたサプライズは、僕の好みの演出だった。



11 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:03:07.74 ID: BDy1x7dk0
 繁華街を学ランで歩いていると、一人のプレイヤーが目に付く。
 ninifと言うハンドルネームで、レベルは28と僕のレベルでは多少辛いものがある。
 いや、いまだ僕は負けた事がない。
 レベルが示すのはその人の経験であって、直接的な強さではない。
 もしかしたら、怖がるほどでもないのか? いやレベル差が開きすぎているから相手してくれないだろう。
 強引に挑もうにも、この人ごみでの戦闘は確実に通報フラグだ。

 でも、もし相手してくれたら?

 胸の中に挑戦的な感情が生まれでて、その場で暴れ僕の心を奪おうとする。
 我知らずに僕は、その表示板の主へと脚を向けていた。

 そのninifは、女だった。
 彼女は時期的に少し早い長めのコートを羽織り、颯爽と人の流れを掻き分け進む。
 しばらく表示板と彼女の動きを後ろから眺めて、間違いがないか確認する。
 彼女はこちらに気がついて居ないようだ。



14 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:04:58.69 ID: BDy1x7dk0
 女性のソロプレイヤーは珍しかった。
 元より女プレイヤーはその数が少なく、レイプなどの危険から、男性とパーティを組んでいる事が多い。
 同時にそれは、自らの強さを誇示しているということだ。

 声をかけようか?

 脳裏を過ぎったのは、ドクオが一撃でジョルジュを打ち破った姿。
 指が膝がガクガクと振るえて、声は引きつり掠れて喧騒に飲まれた。
 もし彼女が振り返ったらと思うと、人の流れを無視してその場に縫い止められてしまう。
 結局、僕はその女性の後姿を見送ることしか出来なかった。

 しばらく辺りをウロチョロと徘徊するとすぐに他の相手は見つかった。
 そのLv14の男を叩き伏せて、本日二度目の勝利を飾る。
 空腹に屈した僕は少し早めの昼食を目指し、ファーストフード店へ向かった。



18 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:06:34.52 ID: BDy1x7dk0
 太陽はまもなく真上に到達する。
 一昨日などは寒くてしようがなかったと言うのに、今日は歩くだけで汗にまみれるほどの炎天下だ。
 期間限定の卵やベーコンを挟んだハンバーガーに齧り付く。
 片手間に眺める公式サイトの画面に、新しいニュースの更新があった。

――HN.○○様がゲームクリアを辞退しました

 ニュース機能を取り付けて唯一後悔したのは、運営からの通知であるこの報告だ。
 辞退すると言う意味を始め理解できず、後日、掲示板の閲覧中に知った。
 知ったその時は恐ろしかったが、けれど、ゲーム開始から二度目のこの表示に何らかの感慨はなかった。

 一昔前はよく通知されたらしいが、今は一週間に一度くらいの頻度で通知される。
 まるでブラウン管の向こうで取り沙汰される殺人事件だ。
 その異常性に恐怖するが、狂気が自らに降りかかる事は想像がつかない。



20 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:08:16.87 ID: BDy1x7dk0
 殺人すら許される無法に見えた世界は、あくまで現実の枠に閉じ込められていたのだ。
 ゲームの創成期にはそれを理解できず、混迷と恐怖が日常だったらしい。
 だが、すぐに逮捕者が出て、例え魔法を使えようとも国家を個人で相手取る難しさに気づかされた。
 やがて、皆がその事実を押し付けられて、ゲームはひっそりとビルや廃工場の陰に隠れた。

 常識の壁と言うものは重厚で、数人のプレイヤーが逮捕された程度の事実で揺らぐ事はなかったようだ。
 例え魔法を目前としても、人々は勝手な科学的事実を捏造し、犯人達に押し付けた。
 だから、今も一般的常識は魔法を否定し続け、揺らぐ事はない。



22 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:09:50.89 ID: BDy1x7dk0
 いつしか殺人や勝利後の窃盗はご法度となり、プレイヤー達が自分勝手に自治団を作って裁きを与え始めた。
 そして、ゲームにプレイヤー達の身勝手なルールが書き足された。
 それらはどこかに明記される類のものではなったが、自治団のお陰で確かな実行力を持った。
 そのローカルルールがもたらした恩恵は、死という恐怖の解放からくる安寧と怠惰だ。
 その事実に押し切られて僕が当初ゲームに感じた畏怖は、甘美な麻痺の対象となっていた。
 恐らく、僕以外のプレイヤーもの殆どがこの麻痺の対象であろう。

 もちろん、一部の実力者はローカルルールなど無視して、勝てればどうだっていいという者も居る。
 初心者は強引に犯罪を犯すものもいた。
 だが、実力者は極少数ゆえにそれこそ災害のようなもので、初心者はイメージを掴みきれずにまだ弱い。
 どちらも、気に留めるような問題ではなかった。

 紙コップの中身が尽きて、ストローで啜るとズルズルと音を鳴らす。
 残った氷を流して、トレーは、上に鎮座するゴミを一掃してからゴミ箱の上の同類達に重ねた。



25 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:11:27.17 ID: BDy1x7dk0
 後片付けを済ませて振り返ると、二人の少女が目に留まる。
 姉妹なのか二人とも容姿はよく似ていて、だのに正反対の印象を受ける奇妙な組み合わせだった。
 僕と同じように学校をすっぽかして居るのだろう、年の頃は幼い方が中学生程度、背の高い方は僕と同じくらいに見える。
 見たところ私服で、僕のように思いつきでの行動ではなく、どうやら二人とも計画の上での行動だと察する事が出来た。

 しかし、先ほどの赤いコートの女性といい、今日は珍しい日だ。
 女性のプレイヤーは少ないというのに、どちらもアンブロのプレイヤーだった。
 二人は恐らくパーティ、レベルが同じなところから開始時からのコンビだと悟る。
 レベルは23と先ほどの女性ほどではないが、僕よりだいぶ高い。

川 ゚ -゚) 「ゲームしないか?」

 ストレートの黒髪を揺らして、毅然とした様で声をかけてきたのは、背の高い方でCoolという少女だった。


27 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:12:22.43 ID: BDy1x7dk0
 先の戦闘を回避したのは、恐怖からだった。
 それを思うと、このレベル差とパーティといった条件は、忌避されるものであるに違いない。
 だのに、昼食時の黙想が僕の背中を押したのか、逃げるという手段は選択されることはなく、僕は当然とばかりに彼女達の後ろを付いていった。

 程なくたどり着いたのは、恐らく病院だったであろう比較的大きな廃墟だった。
 外壁を伝う蔦の絡まり具合や汚れの酷さから見て、相当長い時間放置されているようだ。
 非常階段には鉄柵が針金で固定されていて、その隣にある古ぼけたドアは、明らかに人為的に破壊されて室内に転がっていた。
 彼女達は歩くだけで舞い上がる埃に躊躇も見せずに、廃ビルへと侵入する。

川 ゚ -゚) 「ここは初めてか?」

( ^ω^)「ここはなんなんですかお?」

 廃墟の中は思った以上に綺麗で、比較的人の出入りがある事を想定させる。
 Coolは、「敬語はやめてくれ」と断ってから、この場所の説明を始めた。

川 ゚ -゚) 「ここは溜まり場だよ」



28 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:14:55.62 ID: BDy1x7dk0
 溜まり場の存在は、掲示板で知っていた。
 対戦相手を見つけやすいように、自然と出来たコミュニティで、場所によっては細かいローカルルールが存在する。
 ルールは異なるため、閉鎖的な場所から開放的な場所まで様々で、相手を見つけた場合、決められた場所で戦うのがセオリーらしい。
 掲示板には都内にあるいくつかの場所が紹介されていた。

 もちろん、ローカルルールが大雑把にしか決まって居ないものや、そもそも存在しない場所も多い。
 また、ゲーセンなどが溜まり場となってた場合、対戦場所は各自で勝手に決める場所など様々だ。

 屋内の戦闘かと身構えたが、それは杞憂に終わった。
 ロビーらしき大きめのホールを抜けると、随分と広い中庭が見えた。
 そこでは対戦が行われているようで、対戦フィールドが外周を覆っている。
 入り口には3人の男がたむろしていて、Coolを見ると声をかけてきた。



30 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:18:26.39 ID: BDy1x7dk0
 Coolは彼らの持つ名簿のようなものにペンで記入しながら、男達と談笑している。
 友好的な様子を見ると、彼女と男達は知り合いであるらしい。
 彼女は記入が終わるとそのまま話し込んでしまい、手持ち無沙汰の僕は幼い方の少女に声をかけた。
 カールのかかったツインテールの少女は、窓枠に頬杖を付いて、中庭の対戦を見届けていた。

( ^ω^)「彼女は、君のお姉さんかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「何でアンタに言わなきゃならないのよ?」

 切り返す少女の物言いはとかく鋭く、敵意が露出する様をまるで隠す様子がない。
 友好的とはまるで対称の存在だ。
 話題の方向性を変えようと周囲を見回した。

 ちょうどその時、歓声が上がり、中庭の対戦に決着が付いた事を知らせた。
 一度消えたフィールドをもう一度展開して、控えていたプレイヤーが戦っていた男達の怪我を治す。
 三階建ての建築物は、一辺が渡り廊下となっていて中庭を囲んでいた。
 窓を眺めると、幾人かのプレイヤーが各々窓から観戦している事に気が付く。
 人数は圧倒的に足りないが、それは古代ローマのコロッセオをどことなく髣髴とさせた。



31 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:21:13.47 ID: BDy1x7dk0
 治療組は建物の中へ運ばれていき、次の対戦が始まろうとしていた。
 その様子を眺めているとCoolに呼ばれて、名簿にハンドルネームを記入するよう促される。
 正直、TUNというツインテールの少女から離れる事が出来て、ほっとしていた。

川 ゚ -゚)「じゃあ、この対戦が終わったら私達の番だ。すぐに終わると思うから、準備があるなら早めにしてくれ」

( ^ω^)「おっおー、了解だお!」

 とは言うものの準備がない僕は、入り口から中庭の対戦を見届ける事にする。
 中庭は隅の方こそ雑草が生えているものの、元はタイル敷きだったようで対戦中に足を捕られないくらいに整備されていた。

川 ゚ -゚)「……そういえば、妹と話していたようだね?」

 中庭を見つめていると彼女は僕の隣に来て、声のトーンを落としつつ僕に尋ねる。
 特に考えもせず、僕は首を縦に振った。

川 ゚ -゚)「正直、とっつき難かっただろう? あの子は私以外にはいつもああでね」

( ^ω^)「確かにそんな感じだったお。でも、きっと話せば分かる子だお」

 僕の言葉を聞くと、彼女は僅かに意外そうな顔で僕を見つめた。
 彼女の表情は読みにくいが、予想外と言う驚きと期待がない混ぜになって、筆舌しがたい表情となって居るように感じる。
 その表情は、ゆっくりと微笑へ変貌を遂げ、髪をかき上げる仕草の後には冷徹な表情に隠された。
 なんとなく、彼女の言いたい事が分かる、きっとそれは頼みごとだ。

川 ゚ -゚)「もしよかったらで構わないが」

 ああ、そう来ると思った。

川 ゚ -゚)「ゲーム開始までの間で構わないから、妹と話してくれないか?」



33 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:25:20.10 ID: BDy1x7dk0
 観戦者達のいでたちから推測するに、ニートかフリーター、大学生風の人間が多数を占めていた。
 恐らくゲームプレイヤーの年齢層と時間帯の為だろう。
 平日の昼間だと言うのに、ここには観戦する暇人は以外と多い。

 コロッセオでは、白衣を着た奴と青い制服を着た二人組の警官が向かい合っていた。
 白衣の方はLv38で、長髪で男にも女にも見えるが、たぶん女。
 二人組の警官は共にLv45で、顔が似てるから兄弟なのだろうか? まあ、アレは間違いなくサボりだ。
 ちょうどいいので、僕は無謀にもTUNへと話し掛ける。

( ^ω^)「……中庭での勝負、女の方が勝つお」

ξ゚⊿゚)ξ「あいつらの戦い見たことあるの?」

 大人しい返事に若干の拍子抜けを感じつつ、意外と可愛いところもあるのかも知れないと思い直しながら自論を披露した。
 白衣と警官には、重要な要素がいくつかあった。



35 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:27:06.50 ID: BDy1x7dk0
 二人で視線は窓の外から剥がさずに、ゲームが始まらない中庭を見つめながら言葉を交わす。

( ^ω^)「女の方が異常なまでに自信があるお。それにあの女はスキル以外に注目すべきだお」

ξ゚⊿゚)ξ「なにが言いたいのよ? アンタ頭おかしいんじゃない?」

 まず、あの白衣のマークは、全国にチェーン店を持つドラッグストアのそれだ。
 白衣を着ていると言う事は、仕事サボってるダメな大人だが、同時に薬剤師の免許を持っている証だ。
 この職業は色々な意味で、危険視すべきだ。
 そして、これは口憚られるが、女の異常な眼の据わり方は、恐らくアッパー系を使っているように見えた。
 最後の言葉に、TUNは顔を僅かに歪ませて、嫌悪を示す。

ξ゚⊿゚)ξ「なによ、そんなのチートじゃない」

( ^ω^)「クスリに体力奪われるから、一長一短だお」

 それを聞いても、彼女はまだ不機嫌な表情を崩さなかった。
 Coolの口ぶりからもっと険悪な性格かと身構えたが、なんだ、いい子じゃないか。

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、じゃあ、警官は?」



38 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:31:15.00 ID: BDy1x7dk0
( ^ω^)「警官の方は、特に武器を使う様子がないから、多分負けるお」

 ドラッグをキメている体で、まともに運動が出来るはずがない。
 恐らく彼女は、遠距離攻撃を主体とする一撃必殺なはずだ。 
 その場合、防具か強力な武器での制圧がもっとも有効だが、それは見込めそうになかった。

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、性犯罪者」

 子の少女の口は、どうにも悪いらしい。

ξ゚⊿゚)ξ「さっさと返事しなさいよ、ドン臭いわね。トロイ奴は死ぬべきよ?」

(;^ω^)「ちょwww僕は性犯罪者じゃないおwww」

 知ったこっちゃないわ、と僕の言葉を両断して、僕を睨むように見つめて彼女は続ける。

ξ゚⊿゚)ξ「アンタ、私達と戦うときは、絶対に手を抜くんじゃないわよ?」

( ^ω^)「お? 当たり前だお」

 この眼は、いつか見たことがある瞳だ。
 どこか挑戦的で射抜くようにはっきりとして、だというのに、今とは違うどこか遠くを見ている眼。
 それは僕と言う存在を壊してしまうように見えて空恐ろしく、それでいて吸い寄せられるような魅力があった。
 目標という言葉が、まるでジグソーパズルのピースのようにぴったりと当てはまり僕を納得させる。
 彼女の瞳は、いつかのドクオやジョルジュに似通っている気がした。



39 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:32:52.54 ID: BDy1x7dk0
 すぐにその挑戦的な目線は外されて、彼女はフィールドが展開された闘技場を睨む。

ξ゚⊿゚)ξ「ふん、レディーに手加減しないなんて、アンタ男の風上にも置けないわね?」

(;^ω^)「そっちが本気出せって言ったんだお」

ξ゚⊿゚)ξ「嘘ね。幼女趣味性犯罪者の意見なんて、信じられないわ」

(;^ω^)「ひでぇwww」

 中庭でゲームを開始する表示板が消えて、警官達が二手に分かれる。
 不敵に笑う白衣の女が、その様を眺めながら袖を捲くり、自らの腕をナイフで切り裂いたのが、僕達の視界に映った。

 ( ^ω^)達はゲームクリアを目指すようです
( ^ω^)SIDE・2 了






40 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。 Mail: 投稿日: 2007/10/09(火) 22:34:48.68 ID: BDy1x7dk0
注釈
"一振り3キロの鋼の塊は~"

型月の武器をモデルにブーンが作ったもの、別に俺は型月厨じゃない
鋼から削り出して作ったバカが居るので、その時の重量を参考
当時のブーンは実際の武器に対する知識が少ないので、彼なりに知ってる範囲から作った結果、こうなった

ちなみに比較対照の相手を出すなら、一本で3キロ=日本刀の約三~五倍、比較的肉厚なグラディウスなどと同等
非常に肉厚で重量的に相当な威力を持っているが、振りが遅いので短剣として見ると実戦向きではない


"ヒロインの年齢層なんか低くね?"

俺の趣味だ、文句あるか

"なんで蛍はすぐ死んでしまうん?"

坊やだからさ



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