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    2007

05.15

阿部高和が雛見沢村に引越して来たようです・阿部殺し編 11

「ひぐらしのく頃に」のネタバレ等が
含まれているかもしれませんのでご注意ください。

729 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/13(金) 16:26:23.38 ID: ra2xv6AO
魅音は、沙都子をいとおしげに抱きしめながら、ただひたすらに、舌を吸い、大事そうに舐め上げた。


沙都子は恐怖の為に、唇を震わせながら、それに答えた。


女同士の、神々しく、それでいて何よりも美しい接吻が、既に事切れた入江先生の側で続く。


魅音が唐突に沙都子から唇を離した。

二人の目は涙で濡れていた。


「最後の…キスだよ…。おじさんにはこれくらいしかしてあげられない……ごめんね…。」


サラサラとした沙都子の髪を撫で付けながら魅音が言った。



731 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/13(金) 16:50:45.47 ID: ra2xv6AO
「……時間だよ。目を瞑って…。」


魅音が手に持った拳銃を沙都子の額に押し付けた。


「止めて!止めて!死にたくない!」


沙都子が脅えきって蒼白になった顔で魅音を見ながら言った。


「ほら…沙都子、早く目を瞑って……瞑れ!!!」


魅音が怒りに顔を歪ませながら怒鳴った。


「お願いです…止めて下さい……死にたくないです…。」


沙都子が泣きながら命乞いをした。



732 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/13(金) 17:19:59.41 ID: ra2xv6AO
「そんな事したって駄目なんだよ…沙都子。目を瞑らないならこのままやるね…。」


魅音はベッドの端から立ち上がると、半歩下がって、沙都子の胸に銃口を向けた。


沙都子は怒りに歪む魅音の顔を見据えながら、床に横たわる入江先生へと目をやった。


入江先生の均整の取れた美しい顔つきは、今や紫色の醜い顔つきになり、涙や涎でテラテラと輝いていた。


沙都子は再び、非難がましく魅音を見据えた。


「鬼……人殺し……アンタなんかに…にーにーは渡さない!!渡すもんか!!」


魅音の顔色が急に青ざめた。


「おじさんは鬼じゃない……鬼なんかじゃないよ…」




742 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/16(月) 17:17:13.84 ID: mn9SZr20
魅音は明らかに動揺していた。

突然の事にうろたえる魅音に沙都子がさらに追い討ちをかけた。

「鬼だ!お前なんか魅音じゃない!!」

「鬼じゃないよ・・・おじさんは・・・わたしは・・・」

魅音の手に握られていた拳銃の撃鉄が再び上げられた。

魅音の力の抜けた冷たい目がドロリとうごめき、怒りと恐怖に震える沙都子を見据えた。

「わたしは・・・鬼じゃない・・・!!」

魅音がそう言い放った直後、薄暗い病室からまばゆい閃光と銃声があがった。




743 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/16(月) 17:32:14.97 ID: mn9SZr20
焦げ臭い銃口から発射された銃弾は沙都子の腹部にめり込んだ。

沙都子は膨らみかけた腹を押さえながら二、三度苦しげに喘ぐと、そのまま動かなくなった。

腹部からのおびただしい量の出血がベットのシーツを汚した。

魅音は息を荒げて、その場に座り込んだ。

「沙都子が悪いんだよ・・・おじさんは鬼なんかじゃないのに・・・それなのに・・・沙都子が・・・沙都子が・・」

魅音は握っていた銃を床に取り落とした。

ゴトリ、と鈍い音がして、二人の命を奪ったドス黒い拳銃が床に落ちる。

そのそばで魅音が顔を押さえて泣き崩れた。

「ずっと・・大好きだったんだよ・・・沙都子・・入江先生・・・。」

魅音は声を上げて泣いた・・・それは自らが殺めた二人のために流れた涙なのか否かは誰もわからなかった。






756 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/19(木) 22:59:45.71 ID: RzYMO2AO

「みぃ……どうしたのですか?」


泣き崩れる魅音の背後から不安げな泣き声がした。


梨花だった。


冷たい目をして魅音を見つめていた。

「入江先生…それに沙都子……みぃが殺したのですか…?」


「梨花ちゃん……。」


魅音が顔を上げて梨花の冷たい目を見つめた。

「どうして殺したのですか?」


「あのね…おじさんが悪いんじゃないんだよ……。」

魅音が弁解がましい笑みを浮かべながら言った。


「あのね…あのね…コイツラが私の悟史君をね…。」


「また悟史ですか…。」


梨花があきれたように魅音を見据えた



758 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/19(木) 23:38:19.32 ID: RzYMO2AO
「みぃ…みぃはいつもそうです…。」


梨花が魅音に近付き、綺麗な緑色の髪を撫でた。


「悟史は…阿部に殺されたのですよ。」


「………え?」


魅音の笑みがみるみるうちに消えて無くなり、泣き出しそうな位に不安げな顔になった。

「そんな……嘘だよね…梨花ちゃん…嘘だよね…?」


魅音が不安げな表情のまま、梨花にすがりついた。


「ねぇ…梨花ちゃん、嘘だよね…嘘って言ってよ…お願いだから…。」


しまいに魅音は涙を流し始めた。


「さっき…阿部のガレージに行ったのです。そしたら悟史の死体がシートにくるまれてたのです。」


「嘘だ!!!」


魅音は慟哭し、叫び、呼吸が止まりそうな程にしゃくりあげた。



760 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/20(金) 01:01:37.21 ID: a85t6kAO
「本当なのです…」

梨花が表情一つ変えずに言った。

「悟史君……どうして…どうして…。」


魅音が梨花にすがりつきながらむせび泣いた。


「悟史はやっと苦しみから解放されたのです。みぃ達の苦しみから…。」

梨花は魅音の手を振り払うと、足元に転がっていた拳銃を拾い上げた。


「泣くな」


梨花がしゃがみこんで泣いている魅音の髪を掴み上げて冷たく言い放った。



761 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/20(金) 01:50:10.38 ID: a85t6kAO
魅音が真っ赤に腫れた目で梨花を見つめた。
梨花は魅音の哀れな目を一蔑すると、魅音の頬に拳銃を押し付けた。


「これでカタをつけるのです…悟史の仇をとるのです。」


魅音が不安気な目で再び梨花を見ると、拳銃を手に取った。


「もうすぐ診療所に阿部がやって来るのです…これで阿部を撃ち[ピーーー]のですよ。」


梨花の冷たい表情が一転して笑顔になった。


「さあ、行くのです…阿部を撃ち[ピーーー]のです。」


「分かった…悟史君……阿部を…阿部を…。」


魅音の不安げな表情が徐々に消え、淫靡で好戦的な笑顔になった。


「おじさんやるよ!やる……やる…!」


魅音は興奮に息を荒げながら、病室を後にした。



763 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/20(金) 11:33:22.45 ID: a85t6kAO
梨花は悦びに震える魅音の背中をしばらく見つめると、目を見開いたまま、ベッドに倒れ臥している沙都子に目をやった。


梨花は既に光を失った沙都子の目を見据えたまま、ベッドの側へと歩いていった。


「沙都子…お前は生きるのです。生きなくてはならない。」


梨花が沙都子の膨らんだお腹に手を置いた。


「まだしぶとく生きてるのですよ……あの男の子どもは…。」


沙都子の絶望を宿す虚ろな瞳が梨花の方をドロリと見た。


「う…あ……あ…。」


沙都子が何かを言いたげに口をパクパクと動かし、かろうじて声を発した。

梨花はその様子をしばらく眺めると、床に転がっていた魅音の注射器を手に取った。

そして、それを沙都子の腕に押し当てた。


「いま楽にしてやるのです」

「い…や……止め…て」


腕をかすかに動かして必死に抵抗する沙都子を尻目に、梨花は注射器の薬液を一気に押し入れた。




769 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/22(日) 03:23:44.91 ID: qtgBFAAO
阿部は見失った梨花を追いかけて、診療所の前まで来た。


森にポツンとたたずむ、夜の診療所はいつにも増して不気味だった。

ここに沙都子が入院している…。
それだけで気が滅入りそうになった。


阿部は診療所の玄関にゆっくり歩いて行くと、中を覗いた。


玄関から見える待合室はひっそりと静まりかえっていた。
人の気配はない。


阿部は静かにギシギシと軋むドアを押し開けると、中へと体を滑り込ませる。


途端に奥から狂ったような笑い声が響いて来た。


魅音の声だ…。



772 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/22(日) 20:07:49.17 ID: qtgBFAAO
「誰かいるのかい?」

阿部が診療所の奥に向かって声を張り上げた。

静まりかえった診療所に阿部の声が響いた。

すると魅音の笑い声がパッタリと止み、代わりに息が詰まりそうな程の沈黙が場を制した。


阿部は腰にさしたドライバーを手に取ると、身構えた。


「悟史君は私の物なんだよ…。だから…誰にも渡さない…。」

さっきの笑い声からは想像もつかない程静かで落ち着いた声が奥から聞こえてきた。

「だからね…だからおじさん決めたんだ…」


廊下の角から唐突に銃を構えた魅音が飛び出してきた。


「だから阿部さんを[ピーーー]って決めたんだ!」


魅音は飛び出すのと同時に手にした拳銃の引き金を絞った。

くぐもった銃声が響き、阿部の肩口に銃弾が命中した。


銃弾は阿部の肉をえぐり、そのまま背中を貫通し、背後のガラス戸を砕いた。


阿部は短い悲鳴を上げて、その場に倒れこんだ。



774 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/22(日) 20:41:49.42 ID: qtgBFAAO
魅音が拳銃をチャカチャカと鳴らしながら近づいて来た。


「これで一巻の終わりだね…。」


肩を押さえて倒れ臥す阿部に銃を向けながら続けた。


「アンタさえ来なければ…悟史君は…悟史君は…。」

魅音は阿部の前まで来ると、熱い銃口を阿部の頭につきつけた。


阿部は溜め息をつくと魅音の方を向いて言った。

「悟史は……死んだよ。俺が殺した。…このドライバーで。」


阿部は手に持ったドライバーを持ち上げて、目の前でブラブラさせた。

魅音の冷たい、爬虫類のような目から涙が流れ出し、紅潮した頬を濡らした。


「いつもそう……いつも私の大事な物が私の前から消えていく。」

魅音が言葉を詰まらせながら言った。

「すまない…。」

阿部がうつ向きながら魅音に言った。


魅音が引き金を引き絞らんと、指に力を入れた。


「みんな[ピーーー]ばいい…[ピーーー]ばいい!!」



775 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/22(日) 21:04:22.51 ID: qtgBFAAO
魅音が阿部の頭を綺麗に吹き飛ばさんと、指に更に力を込めた。

引き金が撃鉄を解放し、撃鉄が銃弾を叩き、火薬が炸裂するその刹那、阿部が握ったドライバーを魅音の足へと突き立てた。


かん高い悲鳴が魅音の口から漏れ、拳銃から放たれた銃弾が阿部の頭をかすめて、ヒビが入ったガラス戸を粉々に粉砕した。


魅音は叫びながら尻餅を着いて倒れた。

阿部はすかさず立ち上がると、廊下へ向かって駆け出した。


「畜生!」


魅音はそう吐き捨てると、逃げる阿部の背中へ向けて拳銃を乱射した。


しかし魅音の放った銃弾は阿部のすぐそばの壁をえぐっただけだった。

阿部の姿が廊下の角に消えた。


魅音は口汚い悪態をつくと、足を押さえて立ち上がり、阿部の後を追った


781 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/22(日) 23:17:29.60 ID: qtgBFAAO
阿部は血がとめどなく流れる肩を押さえながら階段を駆け登った。

肩から流れ出る血が腕を伝い、手からポタポタと垂れて床に赤い芸術を描く。

後ろから魅音の恨めしい声が聞こえてきた。

「殺してやる…殺してやる…殺してやる…殺してやる」


いくら阿部が逃げようと、魅音の足音がついて来て離れない。


阿部は階段を登るピッチを上げた。


突然背後から銃声が響き、阿部の脇腹を銃弾が貫いた。

阿部はその場に膝付くと、こみ上げて来た血を吐き出した。


魅音がケタケタと笑いながら階段を歩いて登った。


阿部は血で口元をテラテラさせながら立ち上がると、フラフラとした足取りで階段を登っていった。


階段を登り切り、施錠された屋上のドアへと辿り着いた。


阿部は力を振り絞ってドアに体当たりをして、強引にドアを押し開けた。


阿部は勢い余って屋上に倒れこみ、再び口から血を吐き出した。


階段を登って来た魅音はその様子を見て馬鹿にしたようにあざけ笑った。



787 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/24(火) 02:15:37.02 ID: x.myrEAO
魅音が刺された足を引きずりながら歩いて来た。
痛々しく引きずる足の出血はかなり酷く、動脈を傷付けた事は明らかだった。

魅音ももう長くはもたない…。


「アハッ…阿部さん…もう半分死んでるね…。」


阿部は屋上の手すりまで這って移動し、手すりに掴まりながら何とか立ち上がった。


「沙都子と入江先生はどうしたんだ…。」


「殺した…これで撃ち殺した…。皆…皆[ピーーー]ばいい…。」


魅音は立ちくらみでも起こしたかのようにフラフラと拳銃を持ち上げると、阿部に狙いを定めた。




789 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/24(火) 14:28:12.80 ID: x.myrEAO
魅音が拳銃を構えながら青白い顔をして言った。


「オヤシロ様なんか…この世にはいない……オヤシロ様に見立てた事件は全部おじさんが起こした物なんだよ。昔からそう…全部園崎家が裏で糸を引いてた…。今回の失踪事件だってそう…おじさんがやったんだよ。」


阿部はいまいましそうに血の混じった唾をコンクリートの床に吐き出すと、ケタケタと笑い出した。


「それで大石と富竹に金を渡して殺させた…オヤシロ様のせいにして…。そういう訳か。…このバチあたりめ…。」


魅音はニヤリともせずに無表情のまま言い放った。


「これが最後だよ…。さよなら阿部さん…悟史君…。」

魅音は拳銃の撃鉄をおもむろに上げた。鋭い金属音が、冷たい夜の空気が漂う屋上に特別大きく響いた。



790 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/24(火) 14:51:18.32 ID: x.myrEAO
「待て…俺を[ピーーー]前に一つだけ聞かせてくれないか…?」


阿部が苦しげに咳き込みながら魅音にたずねた。


「これは全て……悟史一人だけのために起こした物なのか…?悟史だけのために…。」


魅音は無表情のしばらく阿部を見つめ、そして目に涙の粒を浮かべながらコクリと頷いた。


阿部が溜め息をつきながらあきれたように頭を振り、ポケットから煙草を取り出して火を付けた。

阿部は咳き込みながら旨そうに煙草をふかした。


「まったく……そうかい…よく分かったよ…これで俺の質問は終りだ。早く俺の罪を清算してくれ。」

阿部は魅音が狙いを付け易いように、手を広げ、胴体を無防備な状態にした。


「さあ…俺を解放してくれ。」


阿部は煙草をくわえたまま、くぐもった口調で静かに言った。

魅音がニコリと笑うと、目に溜っていた涙が頬を伝った。




しばらくして、屋上に一発の銃声が轟いた。


791 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/24(火) 16:18:26.61 ID: x.myrEAO

沈黙が……氷のような沈黙が辺りを包んだ。


物音一つしない真の沈黙。


阿部はその沈黙の中で、煙草を口から離すと、溜め息でもつくかのように煙を吐き出した。


暗闇に揺らめく白い煙は、まるで幽霊のように夜の冷たい空気を漂い、そして消えた。


「まったく…どうしてこんな事になっちまったんだか…。」


阿部は再び煙草をふかすと、コンクリートの床に煙草を投げ捨てた。


冷たいコンクリートの床に落ちた煙草は、数回バウンドを繰り返し、そのまま転がって、床に広がった血の海に着水し、ジュッ、と言う音とともにその動きを止めた。


その煙草の吸い殻のすぐ近くで魅音が頭から血を流して倒れ臥していた。


阿部を撃たんと銃を構えていた魅音が、自分に銃を向けて自殺したからだ。

魅音は涙を流しながら、自分のこめかみに銃を突きつけ、引き金を引いたのだ。



799 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/25(水) 00:11:10.58 ID: nI5tVYAO
まったく……ロクでもない事だ……こんな村に来るんじゃなかった。
阿部は念のため魅音に近付くと、手に握られた拳銃を遠くへ蹴りとばした。

拳銃はコンクリートの床を滑り、手すりを越えて闇へと消えて行った。



阿部が魅音の亡骸から顔を上げると大勢の人間が、階段を駆け上がって来る足音が聞こえてきた。


阿部はドライバーを放り投げると、溜め息をつきながら手すりに寄りかかった。


それから幾分もしないうちに、階段から銃を構えた警官が殺到してきた。


「全員動くな!手を上げろ!」


警官隊の先頭にいた、黒いスーツを着た若い男が阿部に銃を向けながら怒鳴った。



802 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/25(水) 01:04:32.45 ID: nI5tVYAO
その黒いスーツを着た若い男は魅音の亡骸と阿部を交互に見ながら近付いて来た。


「阿部高和…お前に逮捕状が出ている……手を上げるんだ…。」


阿部は男の胸にかかっているプレートをチラリと見た。

プレートには赤坂と書かれていた。


「罪状は殺人罪…君のガレージから二体の遺体を収容した。もう逃げられない…さあ…大人しくするんだ…。。」


阿部は素直に手を上げながら男にたずねた。


「一つ教えてくれるかい…赤坂さん…。」


赤坂はハッとして、胸のプレートを見てから、改めて阿部の方を見据えた。



803 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/25(水) 04:26:54.30 ID: nI5tVYAO

赤坂が銃を油断なく構えたまま言った。


「一体なんだ…。」


阿部は手を上げたまま、手すりにもたれかかり、静かに続けた。


「入江先生と沙都子はどうなったんだい…?」


赤坂がバツが悪そうにうつ向きながら言った。


「北条沙都子は意識は無かったが、一命はとりとめた…入江先生のほうは……既に手遅れだったよ…。」


「そうか……沙都子だけでも助かって良かったよ…。」


阿部が笑みを浮かべながら呟いた。



804 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/25(水) 05:05:59.51 ID: nI5tVYAO
赤坂は銃を下ろすと、阿部に手を差し出した。

「他に聞きたい事があったら、興宮署で聞く…だから、大人しく投降してくれ…。」

阿部は手を上げたまま首を振った。

「駄目だ…ヨタ話はもうたくさんだ……俺はもう戻れないのさ…。」
「待て待て…早まるな…悪いようにはしない…。」
阿部は赤坂を見つめたまま、ケタケタと笑い出した。
その笑い声はどこか気の抜けた寂しい笑い声だった。
「赤坂さん……最後に頼みがある……」
「どうした……言ってみろ…」

「到底許される事なんかじゃないんだが……俺の代わりに…悟史の事を…沙都子に謝っておいてくれ……それだけだ…。」

阿部は弱々しくそう言うと、手を上げたまま手すりを乗り越えて、屋上から飛び降りた。
あっという間の出来事だった。
赤坂はしばらく呆然とすると、溜め息をつきながら銃をホルスターに収めた。

「何をつっ立ってる…早く救急車を呼べ…。」
赤坂は同じく呆然としていた警官隊に溜め息混じりにそう指示すると、魅音の脇にしゃがみこんで付け加えた。
「それから霊きゅう車もな…。」
そう言って赤坂は魅音の顔を覗きこんだ。

その顔はうっすらと笑みを浮かべており、最後まで安らかなものだった。



811 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/26(木) 00:47:21.36 ID: WvBXOcAO

阿部は屋上から転落し、背中をアスファルトにしたたかに打ち付けた。


阿部を中心にじんわりと血が広がっていった。


不思議と痛みはあまりなかった、だが意識がぼんやりとしてきて、今にも消え入りそうな程になる。


阿部はふと脇を見た。


梨花が横臥する阿部のすぐ近くで立っていた。


梨花は阿部の目を覗き込むと、その場にしゃがみこんだ。

そして小さな手で阿部の頬を優しく撫でた。


「高和…そろそろ行かなくてはならないのです。さあ…行くのです。」


梨花が頬を撫でながら、静かに言った。


「……ああ……行くさ…。」


阿部がゆっくりと頷きながら言った。

それを聞くと、梨花は阿部に微笑みかけ、頬から手を離して立ち上がり、踵を返して森の方へと歩き始めた。


阿部はそれをしばらく眺めると、ゆっくりと目を閉じた。


そして、阿部の意識は完全に闇の中へと消失し、二度と目を開ける事はなかった。











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comments

うわああああ


阿部さああああん

-:2007/05/16(水) 16:46:23 | URL | [編集]

いくらひぐらしと言えどこの展開は予想しなかった…

阿部さんが救ってくれると信じてたよ…2までは

-:2008/04/17(木) 03:45:31 | URL | [編集]

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