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    2007

05.15

阿部高和が雛見沢村に引越して来たようです・阿部殺し編 ~FINAL~

「ひぐらしのく頃に」のネタバレ等が
含まれているかもしれませんのでご注意ください。

813 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/26(木) 03:19:51.01 ID: WvBXOcAO

数ヶ月後……診療所


「いい天気だね…沙都子ちゃん…。」


赤坂は赤ん坊を抱えた沙都子を乗せた車椅子を押しながら呟いた。


沙都子はそれには答えずに、ただ虚空に目をドロリと向けるだけだった。


あの事件以来、沙都子の意識は混濁したままだ。
何者かによって(魅音という説が濃厚)何かしらの薬物を注射され、分裂気質の意識混濁が発症し、それ以来この調子である。
多分自分が誰かも満足に分からないだろう……。
その方が今の沙都子にとっては幸せなのかもしれない。


そんな沙都子も、つい一週間前に無事出産をむかえ、元気な女の子を出産した。


その赤ちゃんは沙都子の胸の中で嬉しそうにはしゃぎ、澄み渡った青空に向かって物欲しそうに手を伸ばしていた。


「赤ちゃんも喜んでるよ。良かったね沙都子ちゃん…。」


その様子を見て、沙都子はかすかな笑みを浮かべて、赤ん坊の頭を撫でた。


そんな昼下がりの午後ののどかな光景に、赤坂の顔から自然と笑みがこぼれた。



818 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/27(金) 15:02:14.78 ID: xgcD3kAO
悟史と鉄平が死に、沙都子は一人ぼっちになってしまった。


そんな哀れな沙都子に赤坂は同情し、彼女と赤ん坊を養子に迎え入れたのだ。

世間の目を考慮し、その赤ん坊は沙都子の子供ではなく、妹という事になっている。



「にーにー…にーにー…。」

沙都子は赤ん坊の頭を撫でながら、うっすら笑みを浮かべて、そう呟いた。


「その子は女の子だよ、沙都子ちゃん……だから悟史なんて名前はつけられないよ…。」


赤坂が沙都子の肩に手を置いて優しく呟いたが、沙都子からの反応はない…。



いや………待てよ……。

赤坂は改めて、その赤ん坊の顔を眺めた。

目が…鼻が…口が…いかつい鉄平の物とは似ても似つかない。

鉄平に似てるというよりは寧ろ悟史に……。



いや…止めておこう……。

赤坂は顔を上げると、再び車椅子を押す作業に戻った。


「沙都子ちゃん……お友達のお墓参りに行こうか…。沙都子ちゃんが来たら皆きっと喜ぶよ。」


相変わらず沙都子からの反応はなかった…。
赤坂は溜め息をつくと、ただ無言で車椅子を押し続けた。



819 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/27(金) 15:43:07.82 ID: xgcD3kAO
赤坂と沙都子が墓前に着くと、そこには既に先客がいた。


季節外れの白いワンピースを着た髪の長い女の子…。

その女の子は墓前でしゃがみこみ、目を瞑りながら手を合わせていた。


「……お墓参りに来たのですか…?」


女の子がそのままの姿勢で静かに言った。


「ああ……所で君は沙都子ちゃんのお友達かな…?」


その女の子はそれには答えずに、墓前から顔を上げて、沙都子の前まで歩いて来た。


「……皆…皆死んでしまいました…。」


女の子が悲しげな目で哀れな沙都子を見つめた。


「でも…せめて沙都子だけは幸せになって欲しい…だから注射して、こうしました。」


「……なんだと…?」


「非情な現実に晒される位なら、こうした方が遥かに幸せです…。」


この子は何を言ってるんだ…?

赤坂はいぶかしげな目でその女の子を凝視した。


「とても…とても悲しい事件です…。」


沙都子の青白い頬を撫でながら、その女の子は続けた。


822 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/27(金) 23:22:58.29 ID: xgcD3kAO
「沙都子…もし辛かったら皆の所に連れてってやるのですよ…。」


女の子が沙都子に優しく問いかけた。


沙都子はしばらく女の子を眺めると、うつ向いて、赤ん坊の頭を撫でながら、かすかな声で言った。


「いやだ……生きたい……死にたくない……。」


赤ん坊の顔に沙都子の涙がポツポツと垂れた。

赤ん坊はくすぐったそうに顔をしかめた。


「そうですか…。」


女の子はそう言うと、沙都子の頬から手を離した。


「君は一体…何者なんだい…?」


赤坂が怪訝な顔をして女の子の方を見ながら言った。


「魅音や阿部が夢中なのに、悟史の方は無関心…だから狂っていくのです…心が狂っていくのです…。」



823 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/28(土) 00:06:21.26 ID: FJFEtkAO
沙都子は以前として、うつ向いたままむせび泣いていた。


そんな母親の姿からか、はたまたお腹が空いたのか…胸に抱えられた赤ん坊が泣き出した。

沙都子は泣きながらも上着のボタンを外すと、乳房を露にして赤ん坊に授乳をした。

赤ん坊は沙都子の乳首を口に含むと、涙を流しながら小柄な乳房を吸い始めた。


皆と一緒にいたいが、赤ん坊を残して死ぬことは出来ない…そんな考えがまだやっと小学生の沙都子の意識の根底にあるのだろう…。


赤坂はその様子を見て、何とも言えない気持ちになった。



826 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/28(土) 00:37:57.49 ID: FJFEtkAO

「じゃあ沙都子…ボクは行くのです……今度会うときは…笑って会いたいのです。」


梨花はそういうと沙都子から目を離して、赤坂の方を見据えた。


「赤坂……沙都子を頼むのです…。」


赤坂は胸にかかったプレートを見て、再び溜め息をついた。



梨花はそれだけ言うと、墓前まで歩いていった。


そして再び墓前で手を合わせるとポケットから何かを取り出した。


柔らかな午後の日射しにギラギラと輝くそれは、切れ味鋭い剃刀だった。


梨花は躊躇いもなく、それを喉へと押し当てた。


「止めろ!」


赤坂はそう叫ぶと車椅子から手を離して、駆け出した。


まさにあっという間の出来事だった…。


赤坂が梨花の手首を掴んで、剃刀を引き離した時には既に剃刀が喉を深々と切り裂いていた。


鮮血が傷口から吹き出して、赤坂の服や顔を朱に染めた。


梨花はぐったりとなり、赤坂の腕にもたれかかった。




829 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/28(土) 01:01:25.63 ID: FJFEtkAO
「どうして…どうしてこんな馬鹿な事を…」


心臓の鼓動に合わせてドクドクと流れ出る血を何とかして止めようと、梨花の喉をおさえながら赤坂が呟いた。


しかし赤坂の努力も虚しく、血潮が後から後から出て、止まらなかった。


梨花の顔色が秒単位で青白く変色していく。
だが梨花は微笑みを浮かべて、何とも幸せそうだった。


「これで……いいのですよ……これで…いいのです……皆…皆…幸せ……なのですよ……。」


梨花はそう言うと、静かに目を閉じた。


沙都子は授乳をしながら、その様子をどんよりした目で眺めていた。


「畜生……一体なんなんだよ…この村は!!」


赤坂が顔を真っ赤にさせながら嘆きの声をあげた。



墓前に供えられていた皆の集合写真にも血が飛び散った。


その血は皮肉にも隣あって仲良く写っていた梨花と沙都子にかかり、あたかも血濡れた死人のような顔になった。


午後の日射しは相変わらず墓地を優しくつつんでいた。



832 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/28(土) 01:49:41.95 ID: FJFEtkAO

数日後……警察病院


「こちらに入院している阿部高和に面会したいんだが…。」


仏頂面の赤坂が受付に向かって淡々と言った。

あの忌まわしい事件を解き明かすには阿部の証言が必要なのだ。


梨花の為にも……沙都子の為にも…。


受付嬢が険しい表情の赤坂を困った顔をして見た。


「あの……阿部高和は…現在昏睡状態にありまして…証言する事は出来かねますが…。」


「構わない…会わせてくれ…。」


赤坂がまっすぐ受付嬢を見据えて言った。

受付嬢は溜め息をつくと、病室の鍵を赤坂に手渡した。

「そこの奥の部屋です…。」


「ありがとう…」


赤坂はそれだけ言うと、重たい足を引きずるように病室へと向かった。



833 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/28(土) 02:08:59.50 ID: FJFEtkAO

赤坂は阿部高和とプレートがかかっている病室の鍵を開けると、ゆっくりと扉を開けた。


そしてカーテンが閉めきられた薄暗い病室に踏み込む。

そこでとある異変に気付いた。


阿部がいるべきベッドが空だった…。


赤坂は目を疑った…


病室を間違えたのだろうか……いや…そんなはずはない…部屋の前のプレートは確かに阿部高和となっていたはずだ!!


持ち主を失った生命維持装置が空のベッドの上で黙々と酸素を送り続けていた。



834 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/28(土) 02:22:39.41 ID: FJFEtkAO

クソッ!!やられた!!


赤坂は素早い動きでホルスターに収められた拳銃を引き抜くと、病室のドアを蹴り開けた。


阿部が逃げ出してしまった…。


赤坂は銃を構えたまま受付へと駆け出した。
そして受付へ飛び付くと、受付嬢に向かって怒鳴った。


「大変だ阿部が……」


そこまで言いかけて、赤坂は言葉を詰まらせた。


先程まで赤坂の対応をしていた受付嬢の喉にドライバーが突き刺さっていたからだ。

受付嬢は既に絶命しており、虚ろな目を天井に向けているだけだった。



濃厚な血の臭いが辺りに漂う。


赤坂は銃を携えたまま呆然とした。




835 名前: ◆g4b7GjYsgg Mail: 投稿日: 2007/04/28(土) 02:30:41.16 ID: FJFEtkAO

赤坂は既に悟っていた…これから何年…いや、何十年先…未来永劫阿部の影が彼等につきまとう事を…。


平和な日々が唐突に終りを告げ、残るのは阿部の影に怯えるという絶望だけ…


こんな馬鹿げた事があるだろうか…。


力なく垂れ下がっていた腕から拳銃が滑り落ち、赤坂は力が抜けたようにその場にしゃがみこんだ。








今日もこの世界の何処かで”鬼”となった阿部が息を潜めている。


赤坂を……沙都子を……そして赤ん坊を狙って…。


この忌まわしい事件はまだ始まったばかりだ。

















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阿部高和が雛見沢村に引越して来たようです・阿部殺し編
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comments

普通に面白かった

AAA:2007/06/25(月) 01:37:50 | URL | [編集]

作者gj
才能を感じる

VIPPERな名無しさん:2007/10/10(水) 22:35:20 | URL | [編集]

こんな時間に鬱になるものを見ちまった…

作者凄いな
ただやっぱり阿部さんじゃなくてもよかったろ…
見る目が変わるw

-:2008/04/17(木) 03:53:04 | URL | [編集]

作者の文才に嫉妬wwww
すげぇ面白かった。


この話の続きが読みt(ry

-:2008/08/30(土) 20:25:57 | URL | [編集]

このコメントは管理者の承認待ちです

-:2013/06/29(土) 21:57:45 | | [編集]

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